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2005年12月15日 (木)

パーキングウォーズ part 1

ファミレスにいらっしゃるお客様は、車で来られる方がほとんどです。
新人には駐車場にも気を配るように教育します。
駐車場に車が入ってきたということは、もうすぐお客様が入ってくるということです。
それが分かれば、次に何をするべきか、自分の仕事の組み立てが変わってきます。

ある日のことです。
高校生アルバイトの、手塚さんが駐車場の方をずっと見つめています。
「どうしたの? 手塚君」
僕が近づくと、手塚さんは言いました。
「さっき、車が2台続けて入ってきたんですけど。お客さんが入ってきません」
手塚さんは、まだ新人ですが、駐車場に注意するようにとの言葉を守っていてくれたのです。
「それはね、無断駐車と言うんだよ」
「やっぱり!」
手塚さんは正義感が強いほうなので、その行為を許せないようでした。

言うまでもなく駐車場は、お客様が食事をされている間、車を止めていただく場所です。
店内が、満席に近い場合には先に駐車場がうまってしまうこともあります。
駐車場が空いていなければ、お客様は他に行ってしまうので売り上げに影響します。
そんなわけで、無断駐車は非常に困ったことです。
よく駐車場に、無断駐車は、金1万円をいただきます、などと注意書きがありますが、あまり効果はありません。
そもそも、法的な根拠に乏しいので現実に駐車料金はとれないでしょう。

「どの車?」
僕が聞くと、手塚さんは駐車場の奥の方に止まっている2台の車を指さしました。
駐車場は入り口に近いところもまだ空きがあり、わざわざ奥に駐めるとは容疑濃厚です。
すでに車の中に人影はありません。
これは、帰ってきたところをつかまえて注意するしかありません。
「じゃあ、手塚君、あの車をマークしておいてよ」

その後店は忙しくなり、僕はその車のことを忘れていました。
ピークが去って、ちょっと落ち着いた時、手塚さんがやって来ました。
「店長、あの車逃げられました!」
手塚さんは、悔しそうです。
あの後、駐車場は満車になった時もあったので、無断駐車のおかげで来店できなかったお客様がいないとも限りません。
「店長、私あの車を覚えていますから、今度来たら絶対逃がしません」
「覚えたって、ナンバーを?」
「はい、メモしてありますから」
無断駐車は、一回きりの場合もありますが、常習者もいるので要注意です。

それから、2週間ぐらい後のことです。
手塚さんが、嬉しそうな顔をしてやって来ました。
「店長、例の車がまた駐車しています。」
駐車場のほうを見ると確かに見覚えのある車が止まっています。
「それで、ナンバーは間違いないの」
「ばっちりです! ステッカー貼ってきていいですか?」
ステッカーというのは、無断駐車お断りと書かれた警告書のことです。
「ちょっと待って、手塚君。君は、あの車が入ってくるところを見たのかい?」
「いいえ、入ってきたところは見ていません。でも、2時間前から止まっています」
「ということは、もしかしたら店内にいらっしゃるかもしれないよね」
手塚さんは、不満そうでした。
僕は、レジでデータを調べました。
今は、POSシステムがあるので簡単に各テーブルの在席時間が調べられます。
それによると、現在2時間以上在席しているお客様は、3組。
つまり、その3組のお客様がすべて帰った後に、駐車場に例の車があれば無断駐車確定です。
僕は、もう少し待つように手塚さんに言いました。

駅の近くにある店などは、雨の日は要注意です。
なかには朝、駐車場に車を駐めて電車に乗り、夕方帰ってくるまでそのままにしている人もいます。
そんな場合は当然こちらも気づいているのですが、店内から死角になるところに駐められると、ずっと監視しているわけにもいかないので、いつの間にか逃げられてしまいます。

さらに時間がたち、3組の在席時間が長いお客様が帰りました。
さっそく、手塚さんがステッカーを貼りに行きました。
同業の中には、警告書をガムテープでベタベタにしている店がありますが、あれはやめた方がいいですね。
確かにガムテープで貼ると、きれいにはがすことができず、ある程度は効果があるかもしれません。
無断駐車をしているほうが悪いんだからということでしょうが、だからといって何をしてもいいわけではありません。
日本は法治国家ですから、私的制裁は禁じられています。
相手が何をやろうとも、こちらの行為を正当化する理由にはなりません。
緊急避難等の限られた場合を除き、自力救済はできないのです。

さらにしばらくして、事務所で仕事をしている僕のところに手塚さんがやって来ました。
「店長! あの車に人が乗り込みました!」
正義感の強い彼女は、まだ警戒を解いていなかったのです。
僕が、駐車場のほうに向かうと2台のうち1台に人が乗っています。
どうやら、もう一台の車の仲間を待っているようです。
僕は、その車に近づきました。
そして、窓を軽くノックしました。

対決覚悟の、特攻です。
 
  part 2 に続く 

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